インターネットを介しての「いじめ(Bullying)」は、「ネットいじめ」や「サイバーいじめ(Cyber Bullying)」と呼ばれ、世界中で子供や保護者にとって大変困った問題となっております。
「いじめ」は世代を超えて、形は変われど、太古の昔からずっと存在してきました。
スマホを使う子供も増加する中、日本でもネットいじめが原因で、さまざまな痛ましい出来事も起きている現実です。
今回は、親や教師の目の届かないところで密かに進んでしまいがちなネットいじめについて、その種類や対処法について紹介したいと思います。
最新の知識を得て、子供達をしっかり守ってゆけるように大人も気をつけてパトロールをしないといけません。
スポンサーリンク
5つの主なネットいじめ(SNSいじめ)の種類
以下は、主に見受けられるネットいじめの5種類の例です。
仲間はずれにする
携帯電話(スマホ)を持っていない子は、そもそもSNSのコミュニティに招待してもらえません。
たとえ、携帯電話を持っていたとしても、多くの友達が招待されているのに、自分だけグループに招待されないという仲間はずれの状況も起こります。
また、グループに招待されたのに、グループに入るという意志表示や承認が遅くなったことで、仲間に入る意志が無いと思われて、冷たい目で見られてしまうということもあるようです。
更に、グループの会話の中でも、みんなで盛り上がって、自分が参加すると、皆が一斉に無視するといった仲間はずれもあります。
大勢の方に自分を合わせたいと考えてしまう「大衆の心理」が働き、自分自身はいじめは悪いことだと思っていても、自分の身を守るために会話に参加する(しない)ことで、大勢の方に合わせている間に、いつの間にか誰か特定の子供を傷つけてしまう加害者になってしまう子もいます。
グループに入っても、入れてもらえなくても、それなりにリーダー格以外の人は、人間関係に気を遣うことになるようです。
そして、恐ろしいのは、リーダー格の子も、急に被害者になってしまうという現象が起こることです。
いつ自分が被害者になるかわからないところが、現代のいじめの恐ろしい面です。
嫌がらせ行為
セクハラ、モラハラ、パワハラなど、社会人の間でもハラスメントは問題となっておりますね。
ネット上での嫌がらせ行為は、主に、言葉による嫌がらせです。
子供本人を傷つける言葉が直接送られてきたり、グループの会話の中で、1人を誹謗中傷するメッセージが書かれて、多くの皆の中でさらされてしまったり、さまざまな嫌がらせ行為が行われることがあります。
ついつい冗談がエスカレートして、過激になっていくという例もあると思いますが、その場の雰囲気で、時には激しい口論が飛び交ってしまうこともあるので、あまりのショックから、子供の心をズタズタに疲弊させてしまう恐れがあります。
個人情報や秘密の暴露
知られては恥ずかしいことを、面白がって、皆が見るグループページに書き込んで、誰かを辱めることもあります。
知られたくないことを、書き込まれ、皆に言いふらされ、からかわれてしまった子は、本当に恥ずかしく、悔しいことだと思います。
ネット上のストーカー行為
好きな子のさまざまなSNSの投稿を監視して、どこで何をしているのかを詳細に追いかける行為です。
ストーキングをされている側からすれば、趣味嗜好や習慣なども把握されてしまうことになり、気味が悪いものです。
なりすまし・アカウントの乗っ取り
ハッキングなどの高度なテクニックを駆使することは子供にはほとんど不可能ですが、例えば、自分がちょっとトイレで席を外している間に、友人が自分のスマホを勝手に使って、なりすましとしてSNSに投稿したり、誰かに偽のメッセージを送るなどのアカウントの乗っ取り行為も起こります。
また、本人に無許可で偽のプロフィールを作成して、なりすまし状態で掲示板やSNSコミュニティに投稿するなどの事例もあるようです。
冗談で面白がって、からかいのつもりで行った行為も、時には、乗っ取られた相手を恥ずかしめ、大きく傷つけてしまいます。
スポンサーリンク
「いじめ」は法律で禁止されている!【いじめ防止対策推進法より】
平成25年(2013年)9月28日に「いじめ防止対策推進法」という法律が施行されています。
参考リンク文部科学省 いじめ防止対策推進法
この法律によると、「いじめ」の定義は大まかに以下の通りです。
児童生徒が行う心理的・物理的な影響を与える行為(インターネット上の行為含む)であって、対象となる児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。
国も学校も、予防や対策を行う義務がありますから、もしかして、「うちの子はいじめられているのかも?」と思った時には、すぐに情報収集をして、速やかに対応をされることをおすすめします。
ネットいじめが起こる理由
ネット上のいじめに限らず、小中学校では、友達関係や、さまざまな人間関係の問題が起こるわけです。
嫉妬や好意、何となくむしゃくしゃするなど、ネットいじめが始まる原因はさまざまだと思います。
悪意はそれほどなくても、非礼な行動に向かわせてしまう1つの要因として考えられるのは、脳の発達過程の特徴です。
こちらは、いじめを防ぐ活動をしている女性のTEDのスピーチですが、興味深いことが述べられています。
参考リンクYouTube 書き込む前にもう一度考えて | トリーシャ・プラブ | TEDxTeen
子供は、脳の発達が成長中であり、例えば衝動的な行動を制御するための脳の部分が十分に成熟していないので、大人のように、冷静に善悪の判断をして行動することが難しかったりします。
ですから、深く考えず、脳が成長中の若者は、思いついた瞬間に衝動的に行動に移したりしてしまうというお話です。
彼女は、対策として、SNSに書き込む前に「もう一度、その投稿が人を傷つけるものではないかどうか考えて下さい!」と、冷静に考える時間を若者に与えることが良い影響をもたらしたと伝えています。
ネットいじめが大人に見つかりにくい理由
いじめの被害者となっていても、自らの口で、「自分はいじめられている」と親や教師に言えない子が多いです。
心の奥では、怯えてSOSを出したがっているのですが、敢えてそれを秘密にして苦しんでいる子がいます。
子供の様子がおかしいと思って、親がしつこく問い正しても、子供は何も言わないというケースが見受けられます。
子供の立場からすると、親に言ったら、教師に伝わって、そこから、いじめの加害者に伝わって、自分がもっと過酷な報復を受けるのではないか?ということを恐れているのです。
「誰にも言わない」と言ったのに、親は先生に連絡したとなると、後で子供の受けるショックは更に大きくなってしまいます。
人間不信の状態に陥ってしまうと、復活に更にエネルギーを必要とするでしょう。
ですから、秘密の保持という点では、子供の壊れやすい繊細な気持ちを汲み取って、丁寧に信頼関係を構築するところからスタートすることが良いのではないかと思います。
どうしても何も言いたくないようであれば、子供用の24時間対応の電話窓口を教えてあげましょう。
参考リンク文部科学省 24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310(なやみ言おう)
ネットいじめ(サイバーいじめ)対策のために親ができること
何か子供の様子がいつもと違って変だなと思った時は、もしかしたら問題が起きているサインかもしれません。
心配だと思ったら、パニックを起こさず、いったん冷静になって、様子を見てみましょう。
以下は、親が子供を守るためにできることのリストです。参考になれば幸いです。
早期発見に努める
「いつもと違って今日は元気がないな」とか、「食欲がないのかな?」と、子供の様子にいつもと違った変化があって疑問に思ったら何かのトラブルの兆候かもしれません。
しかし、いきなり「ネットいじめ」などを怪しんで、子供の携帯をこっそり見て問い正す、などといったことは、子供を逆に追い詰めてしまうので、決して早まった行動はとらないように努めましょう。
子供の携帯電話とはいえ、勝手に覗くことはプライバシーの問題もあり、親子と言えどもタブーです。
文部科学省のサイトに、いじめの兆候として、よくある事例をチェックするシートが公開されていますので、まずは、いくつくらい当てはまるか、参考までにチェックしてみてください。
参考ページ文部科学省サイトより「いじめのサイン発見シート」 (PDFダウンロード・印刷可)
子供の味方であるという立場を貫く
根掘り葉掘り話を聞き出そうという態度は子供を追い詰めてしまう恐れがあります。
誰も信用できなくなってしまうと、子供の心は八方ふさがりになってしまいます。
どんな時も、子供の味方であることを伝えて、丸ごと子供を受け入れ、本人をまずは安心させてあげましょう。
以下のような内容の言葉は、極力使わないようにしましょう。
「あなたも悪い」
「弱いからいじめられる」
「無視しておけばいい」
「言い返せばいい」
また、子供が口を開いて、心の中のことを伝えてくれた際には、「話してくれてありがとう。」と感謝を込めて優しく認めてあげることを忘れないでください。
情報収集・証拠集め
ネットいじめがリアルないじめよりも有利な点は、証拠が残るところです。
匿名の書き込みであっても、書き込んだ人を特定することが可能です。
また、携帯電話の画面のスクリーンショットを撮って証拠をのこし、掲示板であれば、印刷などをして、書き込まれた内容を保存し、証拠を残すことができます。
証拠を元に、次の手が打てますので、できる限り証拠を集めておきましょう。
ネット上の掲示板などの投稿やコメントなどの削除の依頼をする時は、学校の先生など、第三者に確認してもらってから動き出す方が良いと思います。
詳しくは、こちらの文科省のネットいじめ対策マニュアルをご活用ください。
「ネットいじめ」に関する対応マニュアル・事例集(学校・教員向け)
学校を休ませる・もしくは保健室に通わせる
まずは、子供の安全と安心な環境を整えることが大切です。
嫌がる子供を無理に学校に向かわせて、心の傷が深くなってしまうと、再起までに時間が余分にかかってしまうこともあり得ます。
問題があると感じられる場合は、早い段階で子供の意志を尊重し、無理に学校に行かせないということも心のケアにとっては重要です。
保健室に通うという方法も認められていますし、スクールカウンセラーが配置されている学校であれば、密かに相談を受けてみることもおすすめです。
要するに、いじめられている場合でも、対処方法や安心できる道はたくさんあるということを子供さんに伝えて、心の平穏を大切にすることを優先してほしいと思います。
学校に相談・ダメなら弁護士など
国と学校は、法律に基づき、いじめの防止に努める必要がありますから、相談した場合に誠実に対応することになっています。
相談しても、どうしても聞く耳を持ってもらえないなど、学校に不誠実な対応が見られる場合は、弁護士さんなどに相談することも致し方ないと思います。
いじめに負けない勇気が出る映画
おすすめの映画としてご紹介したいのが「ワンダー 君は太陽」です。
主人公は、生まれながらに外見上の問題があって、いじめをうけて苦しむのですが、自分の意志と家族の協力で乗り越えていくストーリーとなっています。
子供をいじめの加害者にさせないために
現代のいじめには、いつの間にか加害者になっていたり、突然立場が逆転して被害者になってしまったりというケースが起こりえます。
いつ何時、自分が加害者や被害者になってしまうかわからないところが怖いのです。
保護者として、1人の大人として、いじめの加害者になった場合の悲惨な将来を日頃から具体的に伝えておくことが大事なのではないでしょうか。
例えば、交通事故であっても、自分がもし加害者となってしまった場合、相手が死亡したら、その後、自分はどのような人生に様変わりするのか?想像してみてください。
楽しいからと言ってスピードを出し過ぎて事故を起こしてしまった場合のことをを想像すると、怖くなって安全運転に努めるようになるでしょう。
それと同様、いじめにおいても、もし被害者が万が一、死を選んでしまった場合、加害者としての自分の将来の人生を想像してみることが大事なのではないでしょうか。
親や教師は、「冗談でも決してやってはいけないこと」と、「なぜやってはいけないのか?」その理由をしっかり子供達に教える必要があります。
また、人を傷つける行為、そのような行為に加担してしまった場合など、子供の悪事が判明した時点で携帯電話やインターネットの使用を停止させるなど、普段から家庭内でのルールや罰則を作っておくことも有効かもしれません。
ネットいじめ対策として親ができること・まとめ
今回は、主にインターネットを介して起こるいじめに焦点をあてて、ネットいじめの種類や原因、更に親が取り組める対策方法などについてご紹介しました。
感染症拡大の影響で、学校が臨時休校となっている2020年4月現在ですが、子供達を取り巻く環境も、今後ますます変わってゆくでしょう。
実際に会って交流することよりも、SNSなどのインターネット上のコミュニティで交流する活動が活発化すると思われます。
そのような将来の中で、ネットいじめ問題が深刻化することのないよう、大人の1人として今後も啓発活動に取り組んでいけたらと考えております。